COC中央石油販売事業協同組合
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独立系石油流通小売業者の事業組合です。石油、ガス、再生エネルギーの安定供給を死守します。行政や業界団体の意向と一線を画して、お客様本位のサービスとは何かを追及しています。
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facebook.com優秀な日本人経営者が2万人もいて、中小企業から上場企業に発展した会社がほぼ皆無という業界。他の業界なら10数社はいるだろう。上場企業がいいというつもりはない。しかし「企業成長」という当たり前の経営論が、「供給論」、「市況論」によって圧殺された。有為な人材の墓場産業になった。 それを望んだのが石連・全石連、霞が関、石油議連の方々。 ◆ 3月19日油業報知新聞 SSは小売進化のらち外にある 私はSS市場を小売業のマーケティングの視点で眺めてきました。しかし、有識者や業界団体の方々の口からは、“石油供給最後の砦”とか“サプライチェーン”といった勇壮な言葉が飛び出してきます。 “進め一億火の玉だなんて言葉を連想してしまいます。ようは政策とメーカー主導の供給論で見ているのです。 昭和20年代に外資系石油会社がせっかく「サービス・ステーション」という概念を持ち込んでくれたのに、役所、業界団体、メディアは「給油所」と呼んでいます。これ戦前の言葉ですよ。コンビニを雑貨屋と呼ぶようなものです。 この業界はマーケティング視点を忌避する力学が働いているようです。 “ふつうの小売業界”と推移を比べてみるとかなり歪に見えます。私はマーケティング専門家ではないのですが、戦後の小売業発展段階はざっと以下のようになると思います。 ●第1段階・モノが必要な時代 1960年代。メーカー系列店の活躍。地域中小企業が店舗と人を準備して、メーカーは製品供給と宣伝活動。この両輪で全国津々浦々に製品を普及。SS、自動車、家電、ミシン、牛乳、文房具…。 ●第2段階・モノの差別化 1970年の大阪万博戦後。メーカーが製品競争に。自動車の若年、スポーツ市場への広がり。丸善モーレツガソリン、家電の性能競争。やはり系列店が主導。 ●第3段階・モノの選択肢の提供 大阪万博後。モノが行き渡った段階で非系列店の登場。象徴は家電量販店と総合スーパー。石油でも無印登場。商品の比較購買の選択肢を提供。 ●第4段階・消費者目線の新業態 1980年代。郊外住宅開発と共働きなど生活者の変化に対応して、顧客接点に立つ新業態が登場し成長。コンビニ、ファーストフード、カーショップ、ホームセンター、ファミレス、居酒屋…。 ●第5段階・業態の差別化競争 平成前後より。サービス、商品開発、システム、取引等の精度向上。製造小売り業態(ユニクロ)の出現。上場企業の出現と業態の優勝劣敗。100以上あったコンビニ本部が数社に集約。家電業界の大集約。 ◆ 小売の進化形とはメーカー系列から小売業による自立業態への主導権の移行です。この過程で中小から始まった業態が成長して、少なからぬ上場企業を生みだしています。 一方、日本の石油業界は、第2段階以降の変動の兆しを「ガソリン供給論・市況論」で封殺しました。揮発油販売業法とか標準価格設定とか弥縫策を駆使して小売りの変化から目を逸らせました。系列・非系列問わずチャレンジ精神を持つ経営者はいましたが、業界構造の中で牙を抜かれました。 今や、高度化法と元売再編の「供給の論理」が席巻して、小売りのチャレンジ精神を委縮させてしまいました。 かたや、欧米の石油業界は第2、第3段階の頃からセルフSSが台頭し、新業態であったコンビニを取り込んでいきます。 フランスで成長した総合スーパーによるハイパーが欧州各国に広がりました。米国でも90年代央からハイパーが成長します。21世紀になると、石油系コンビニが後退してセブンイレブンなど流通系コンビニが市場の主役となりました。欧米も小 売業の変化で語ることができます。強い小売りがメーカーのチャネル政策を転換させています。COCの渡米組によると、コンビニやハイパーのカテゴリーキラー(業態破壊者)が登場しているそうです。 石油業界は半世紀以上前から、零細業者保護を大義名分にしてきました。21世紀の今も零細店保護を口にしています。“ふつうの小売業界”で30年前にパパママストアの減少が話題になりました。彼らはコンビニFCなどでパパママを吸収しました。SS業界で半世紀たっても、零細店の自立業態が系列政策で確立されていません。 供給論・市況論で語るかぎり、零細店は予算・補助金獲得の枕詞に過ぎないということです。
出光興産のニュースリリース。 JXTGなどアジア戦略を口にしながら「国内タコツボ」のぬるま湯を楽しむ元売にあって、さすが販売会社の遺伝子を持つだけに動きが早い。すでに米西海岸では買収した独立系卸売り会社が年間400万KL以上売っている。日本では嫌うがアメリカでは堂々と業転屋をやっている。たくましい。 豪州ではフリーダム社が65万KL、SS40カ所を展開している。今回豪州でフリーダム社によるトリニティ社買収をやった。15万klの会社。以下リリース。 ◆ 豪州独立系燃料油販売会社「Trinity 社」の買収について 2018年3月9日 当社(本社:東京都千代田区、社長:月岡 隆)は、豪州ブリスベンに本社を置く 100%子会社のフリーダムエナジーホールディングス社(以下”フリーダム社”)を通じ、豪州クイーンズランド州ケアンズを事業拠点とする燃料油販売会社トリニティー社(持株会社はエルフォント社)の発行済株式 100%を、3月9日に取得しました。 1.目的 当社は、環太平洋を中心とした海外の成長市場において、燃料油の供給から販売に至る事業基盤構築を進めておりますが、今般、新たに豪州の独立系燃料油販売会社であるトリニティー社を買収しました。 トリニティー社はクイーンズランド州北部を中心に、タンクローリーで顧客に燃料油を持ち届ける卸売事業や、18か所のサービスステーションを通じた小売事業を行っています。 豪州は引き続き堅調な燃料油需要の伸びが期待できるうえ、製油所の閉鎖に伴い輸入比率が高まっています。当社は、既に豪州ではフリーダム社により事業基盤を確立しておりますが、本買収を通じ更なる事業拡大を図ります。 今後とも、海外における当社の供給・トレーディング・販売のサプライチェーンを拡充し、環太平洋での燃料油事業を強化してまいります。 2.株式取得の概要 取得形態 当社の 100%子会社フリーダム社による株式買収 取得株式 Elfont Pty Ltd (トリニティー社の100%持株会社)の発行済み全株式 取得日 2018 年3月9日 取得後の事業方針 フリーダム事業とあわせ、豪州東海岸のリテールネットワークを拡充し、輸送用燃料油需要を確実に取り込んでまいります。また、営業力強化により、直売・卸事業の強化に取り組みます。 3.トリニティー社の概要 会社名 Trinity Petroleum Services Pty Ltd 本社所在地 オーストラリア クイーンズランド州 ケアンズ市 事業内容 石油製品(軽油、ガソリン)の販売 【販売エリア】クイーンズランド州北部(ケアンズからタウンズビルにかけての地域) 【販売量】約15万 KL/年 従業員数 160名 設立 1987年 売上高 約2億豪ドル(約 170 億円)
写真は米国セブンイレブン(SEVEN.Inc)が買収したSUNOCO社(サンオイル)のSS。日本のヘタレ公取委と違って米国FTCは買収条件として、セブンに80店舗の売却、運営交代を命じている。 既存店だけでガソリン販売量1860万KL。出光と昭和シェル束になっても敵わない。SUNOCOの約千店はガソリン販売量でセブンの1.5倍。これを加算するとJXTG追い越しちゃうね。セブンが過去に買収したEXXONMobilの店舗はガソリン、CVSともに大幅に売上げ拡大。 日本のタコツボ市場で威張っている大手元売とか販売業者って、世界ではガキの使いに過ぎない。しかも「石油販売業者」ではなく「CVS業者」の販売力なのだ。 ◆ 油業報知新聞3月12日付 CVSはメジャーよりガソリン販売が上手 2月末からCOC有志数人が渡米して、テキサスで小売りの最新業態を訪問しました。私は同行出来なかったのですが、彼らの帰朝第一声は「凄い新陳代謝」でした。何年か前までは、EXXONやCHEVRONNなど石油系CVSがブランド力を維持していました。しかし今回は「ガソリンスタンド系」が存在感を失い、何種類もの業態複合やCVSに対するカテゴリーキラー(既存破壊業態)がガソリンでも支配権を握っていたそうです。 ところで、セブンイレブンが米国事業会社(セブンインク)の経営状況を明らかにしています。スノコ社から1千店舗の巨額買収を行ったので、投資家に対する情報開示が目的です。 2017年の営業利益見込みが8.1億㌦、日本円で9百億円強です。全グループ連結利益で米社比率が19%超となり、10年で倍増しています。米社はグループ内の“成長エンジン”ということです。 四半世紀前に本家本元の米サウスランド社が経営破綻し、弟子筋の日本セブンが事業を買収しました。日米のサービス水準の違いと投資家対応に苦慮しながら、2005年に多額の資金を投じて公開買い付けで米セブンを非上場、完全子会社化します。買収に続く大変な投資ですが、これ以降、米国セブンの業績が改善します。 私が渡米した08年当時は、ちょうど端境期にあったのでしょう。中西部の店は暗く、汚く、段ボールが転がり、店員同士のおしゃべりでレジ渋滞。一方、西海岸サンディエゴの直営店は商品内容を除けば日本と全く同じでした。クレンリネスと商品管理が徹底されレジも日本並みに機敏でした。非上場化で投資家を気にせず、日本流を米国小売市場に持ち込んだのです。 そして米社業績好調の要因として、ファーストフード・品ぞろえ強化・PB商品の拡充などの商品戦略、スマホなどのデジタル対応戦略、新店開発と既存店活性化、店舗の生産性向上…等々に加えて「ガソリン」が置かれています。 ◆ 米セブンのガソリン販売店舗数は全体の3分の1、3300カ所です。旧TG、出光、シェル、コスモと同レベルです。 そして2016年のガソリン販売量は49.1億ガロンです。KL換算すると1860万KL。日本なら「シェア37%」というとんでもない数字です。しかも1店月間平均460KLです。全米平均300KLの1.5倍です。 M&Aでは5年前にエクソンモービルから買収した131店舗について、 ① 取得時日販3250㌦が4900㌦ ② 同粗利益率28.2%が35% ③ 同ガソリン日販5379ガロンが6340ガロン と大幅に業績改善されています。ガソリンを月KL換算すると、610KLから720KLへの増販です。小売業者のセブンの方が儲ける力はもちろん、ガソリンの売り方も石油メジャーのEMよりうまいことが証明されてしまいました。 同社は米国市場についてこう述べます。 「石油メジャーによる小売事業の撤退⇒ガソリン小売価格の競争環境緩和。日本と異なり、細分化された市場環境(上位10社で17%のシェア)。したがって成長余力が大きい」 つまり、メジャー直営撤退で石油会社の価格統制力が弱まり、また、多様なCVSブランドが存在することで市場の成長性が高いと述べているのです。日本のCVS市場はほぼ3ブランドに集約されています。セブンは、ブランド多様性なき国内市場を成熟とみて海外のグリップを強めるでしょう。 2018年はスノコ社の1千店が加わりますが、ガソリンはセブンの1.5倍です。年間800万KLアドオンされますから、JXTGを追い抜くかもしれません。 日本でCVSは「多角化の1つ」程度の理解ですが、実は油屋よりもガソリンを売るのが上手いのです。
写真の標識が物語るように、車って簡単に市町村を越えるもの。常識。車相手のSSで過疎地対策を「市町村」で考えるのはどうなのか。消費者は自分の行動圏で給油するから、他市町村のSS使う人結構多い筈だ。 ◆ 油業報知新聞3月2日付 市町村別括りのSS過疎地 資源エネ庁が研究会などで世間に公表する資料で気になるものが幾つかあります。 「SS過疎市町村リスト」があります。資源エネ庁はSS数3カ所以下を過疎地と定義して、平成26年度末283市町村、27年度288市町村、28年度末302市町村と、SSの少ない市町村が増加基調にあります。これは品確法登録の実態ですから、そうなのでしょう。 北海道、和歌山、高知などでSS経営母体を設立して廃止SSを復活する動きも出ています。SSが無くて本当に困っている地域があることを否定しません。ただし、SS業態の特性を考えた場合、「市町村」の括りで考えることには違和感を覚えます。これ以前にも書きましたね。 私が住む首都圏郊外はSS過疎地ではありません。元売直営SSが地場業者を駆逐してしまったような、消費者にとって実にありがたい競争地域です。 さて、自宅から直線距離200mにSSがあります。至便な距離です。しかし、同SSがオープンして四半世紀、利用したことがありません。500m離れた他市のSSか、川を越えて4-5km離れた隣県のSSを利用しています。私の行動が一番近いSSと反対方向に向いているからです。だから県や市の境界を簡単に越えてしまうのです。 私の一件は、全てのドライバーに言えます。毎日、主人や子供の送迎に利用する主婦は自宅と駅の間でSSを利用するか、毎日買い物に利用するスーパー近隣のSSを利用することが多いでしょう。通勤で車に乗る人は職場の行き帰り動線上でSSを利用することが多いと考えられます。時速40kmの車にとって、市町村の区切りは意味がないのです。 ある地域でSSのない山間僻地は困っていると思いきや、実は日常行動として買い物や銀行や農協など所要で市街地に頻繁にあるのです。その都度給油しています。市街地のカーショップは秋の収穫で山間部に収入が入るタイミングでタイヤキャンペーンを仕掛けるそうです。 “SS過疎地”消費者の困惑にも、地域ごとに温度差があると思われます。 私が「市町村の括り」にこだわるのは、30年前まで揮発油販売業法時代にあった「指定地区」にオーバーラップするからです。過当競争回避を目的に市町村単位でSS新設と大規模改造を禁止しました。しかし隣接する市町村に新しいSSが出来て、指定地区の顧客が「地区外」に流出する現象が起こりました。市町村の指定が、かえって地区内SSの近代化を妨げる結果となりました。 過疎地対策を真面目に考えるなら、SSが少ない市町村の車の流れを読む作業が必要になるはずです。20年前にマクドナルドの店舗開発担当者は、郊外店舗立地調査で車の大きな流れがどこに向いているかを、平日・休日、時間帯別、車種別等々で実地調査していました。「交通発生源」という言葉を使って、市町村でなく広域に車の流れを追求していました。 役所に致命的に欠落するのは、マーケティング視点です。上記の某地域の例にあるように、過疎地の生活が過疎地内で完結しているわけではないのです。補助金でポータブル(可搬式、PS)を設置しても猫マタギされかねないのです。
COCの新年研修会が2月21,22日の両日に熱海で開催された。経済講演でお呼びしたのが経済学者で元財務官僚の高橋洋一氏。政治家、霞が関、業界団体の手の内を熟知しているので、最近のメディア報道のフェイクぶりを主義や思想でなく原理原則で分かりやすく話してくれた。大好評だった。写真は高橋洋一氏と村上直之COC理事長。 この日、資源エネ庁担当官に流通行政の説明を受けたのだが、タイミングよく日経がトップでSS無人化など消防規制緩和の方向性をぶっとばした。この話題で盛り上がりました。 ◆ 2月26日付油業報知新聞より 業態は多様化する筈の次世代研究会 COCの新年研修会が終了しました。お呼びした講師陣が想像以上に気合を入れてくれたおかげで、参加者それぞれに刺激を戴いて盛り上がりました。残念だったのは熱心な会員数社が豪雪被害で、1名がインフルエンザに罹患で欠席されたことです。 さて、研修会初日の日本経済新聞がトップ記事で「給油所でEV充電OK コンビニ併設も可能に」と報じました。「経済産業省はSSの規制緩和に乗り出す。次世代自動車の燃料となる水素や電気を供給できるように施設の設置基準を緩める。コンビニエンスストアや物流営業所も併設できるようにする」という内容です。消防規制緩和でSSの事業、複合業態の制約を外すということです。 この日、資源エネ庁の小林誠課長補佐をお呼びしてPOSのIC対応と流通行政を説明いただくことになっており、実にタイムリーな報道でした。小林さんが研究会が始まるとおっしゃっていましたので、資源エネ庁のHPを確認しました。 「次世代燃料インフラ研究会」(座長・安念潤司・中央大学法科大学院教授)です。SSに関わる検討課題(概略)として ① 敷地利⽤の規制=SSの給油と付帯業務以外は不可(消防法) ② 監視体制の規制=セルフSSの監視義務(消防法) ③ 機器使⽤の規制=ベーパー滞留範囲の機械器具使用制限(消防法等) ④ 給油方法の規制=ガソリン給油は原則地下タンクのみ(消防法) 以上の4つの規制緩和をあげています。 「敷地利用」と「機器規制」はSS内での事業自由化、「監視体制」については無人化、「給油方法」は地上タンクからの給油が検討されます。 1986年にSS取扱い商品が自由化されていますが、設置基準など運用面で規制に縛られています。私の身近でこんなことがありました。レンタカーをSS店頭に置いていたら、某カーケアチェーンから“国交層と消防に告発する”と脅されました。事なきを得ましたが、給油客もレンタカーも同じ車ですからおかしな話です。 地上タンク化は過疎地対策でしょう。昔、へき地に多く合ったPS(可搬式)の利用が思い浮かびます。 面白いのは研究会資料に米国のYOSHI、オランダのシェルTapupという、「ガソリンデリバリー(配達)」が紹介されています。有名なフランス映画、「シェルブールの雨傘」で確か屋内型整備工場でガソリンを給油していました。こういう拡大解釈もありですね。 そして、監視体制が無人化されそうです。一昨年にテレビ番組で暴露されたように、実態として無人が少なくありません。 30年前の取扱商品自由化、20年前のセルフ化と消防規制緩和のたびにSSビジネスは変わりました。検討課題の字面を読むかぎり、SS業態は相当に多様性を持つでしょう。一方、気がかりなのは、ガソリン供給だけで系列垂直統合(配給統制)を進める元売と、セルフ解禁時に「有人」を主張した全石連です。研究会をミスリードしかねないので要注意です。
米国FTCは「過度の集中」にきわめて敏感に対応する。 セブンイレブンのスノコ社CVS1100店舗(=SS)買収に対して、自店舗の売却とスノコ社の売却店舗数に制約を加えた。「セブン集中により値上げされる可能性がある地区」を憂慮しての指示だ。 2001年のエクソンモービル統合時には5分の1のSS網に加えて、一部の油槽所、パイプライン、海軍納入権などを競合に売却させている。 ひるがえって日本の公取委の独禁法への感度の違い。今の石油業界、「独占」が起こっているんじゃないのか。 ◆ 油業報知新聞2月19日付 石油もCVSも日米公取委の温度差 昨年5月、セブンイレブンが米国でスノコ社(SUNOCO)のSS(CVS)ネットワーク1100店舗買収を発表しました。 スノコは日本でもエンジンオイルでブランドが知られています。同社は20世紀初頭、SSネットワーク拡大のためにFC(フランチャイズ)制度を導入しています。物の本によると、シンガーミシンに次いで2番目のFCだそうです。スノコのFCが日本では「特約店制度」と名前を変えて現在に至ります。 冒頭の件ですが、米FTC(公取委)からクレームが付きました。全米20州、76都市でセブンが過度に集中するため「価格値上げの恐れあり」でした。最近、FTCの調停が決まりました。セブンは直営28店舗を競争者に売却、スノコは33店舗を売却せず運営継続か競争者に売却というものです(ロイター報道)。 買収額から割り出すと1店舗約3.1億円。セブンは200億円ほど余計に出費したことになります。買収店舗数の5%ほどですが、エクソンモービル誕生時の大規模な営業資産売却指示といいFTCは“公正取引”に厳しいなと実感します。 どうしてもJXTG統合時の公取委と比べてみます。直営SSや基地売却など負担ゼロでした。「過度の集中」に対する感度が日米で天と地ほども違うようです。その結果、業転が縮小し、セルフSS総数の50%以上を占める元売系列が市況是正に動いたら、きれいにガソリン価格が上がりました。これはSS業界にとって喜ぶべきことではありますが、上記のセブンに対するFTCの「価格値上がりの恐れ」が現実になったとも言えます。 CVS業界で、日本でもセブンが強く、大胆にスクラップ&ビルドで大型新店を広げています。ただしこの業界、業合のファミマやローソンもオンリーワン商品を持ちます。商品力で競っているので、店舗シェアに安住できないところがあります。 さらに、飲食は同業態だけの競争ではありません。CVSがコーヒー市場を席巻しましたが、スタバがオフィス向けに機器設置で対抗だそうです。コメダやルノアールのようなフルサービスで客単価が高い代わりに長時間過ごせる喫茶店も人気です。私もこの原稿をルノアールの電源を使いながら書いています。 つまりCVSなど食品市場は、1日3食+間食を巡って業種業態入り乱れての白兵戦を展開しています。容易に独占はできない市場構造です。 ひるがえってガソリンは、規制と業界慣習のベールをかぶったSS以外で買えません。ガソリンはローソンからあげクンのようなオンリーワン商品ではなく、同じ基地から出荷された同質商品であり、燃料という消耗品なので、業界人が叫ぶほど消費者は商品に思い入れがありません。 こういうコモディティ市場では、数の論理が生きます。だから小売業者がガソリンにこだわってばかりいては、系列の場合は特約店という呼称からCVS並みのFC統制に入るでしょう。PBは縮小均衡するだけです。 FTCと公取委の判断の違いに慨嘆しますが、独立系はオンリーワン商品開発急務と感じています。
連ちゃんで書いたけれど、業界の識者なる人たちがブランドを元売でしか認識していないことに違和感を覚える。SSが小売業であるという前提で考えれば、ストアブランドを認識すべきだ。マック、ケンチキ、銀だこ・・・これを認識しないと市場の実態を判断できない。 識者なる人たちは、予算や補助金や政治資金を中心軸にSSをとらえている。したがって供給業、給油所業と認識しているから、元売様だけがブランドと考える。 本気で商売する人は、市場の競合店を「○○石油(商店)」とブランドで認識する。なんか、ものすごい温度差を感じてします。 ※写真は英国業界が認識する(統計に明記される)Rix社のPBSS。36カ所の会社。 油業報知新聞2月12日付 小売ブランドで認識したい 前回、英国PRAのブランドデータを引用しましたが、新しいものが出ています。さらに1つ、新しいSSブランドが追加されています。ESSARの40カ所です。この会社、インドの元売です。70万BDの超大型製油所を稼働しています。SSのFC事業を英国で展開しているようです。 詳細は知りませんが、インドに進出するメジャーと国際バーターしているかも知れません。日本の元売がアジア進出する場合も、現地製油所から調達すると考えられます。その場合、ESSARのようなアジアの石油会社が日本市場でブランド展開する可能性もあります。 欧米の主要石油会社は精製縮小のショートポジションで、精製専門企業から調達しています。石油会社、流通会社の戦略や折り引き条件で、多様なブランドが展開されています。 日本も環境は同じ流れにありますが、学識経験者やメディアもブランドは元売しか認識していないようです。SSは小売業なのに供給発想でしか見ておらず、マーケティングの観点が欠落しているのでしょう。 系列・非系列問わず、ある地域において消費者が元売ブランドではなく、○○商店など企業名で認識している例はあまたあります。供給は元売でも、顧客接点のブランドは○○商店なのです。元売の流通支配が強まっても、独自の小売経営を行う系列業者は少なくありません。 英国のブランド認知に比べると、日本は商売に関心のない人たちの声が大きくて、昔の軍隊のように「体(経営)を服(元売)に合わせろ」と言っているように思えます。 現実の市場では、JAやホクレンといった巨大農業組織は、独自のマーケティングを展開するPBです。市場での影響力もあって、無視できない存在です。SS市場という観点で見れば、元売ブランドと並列に置くべきです。 コストコ、ジョイフルホンダ、イオンなど流通系もガソリンをどこから買っていようとも、元売のマーケティングとは無関係の市場戦略であり影響力もあります。 また、SS事業者のPBでも100カ所を超える会社があります。20ヵ所までハードルを下げても、大部分がドミナント展開ですから、ある地域においては大手元売よりも消費者認知度が高いのです。れっきとしたブランドです。 調べるとブランドは家畜の識別の焼き印から始まったそうです。市場影響力があり、SSビジネスに特徴(識別)があればブランドです。 差別性のない同品質のコモディティ商品供給の延長線上の「配給発想」で小売市場を考える人たちにとっては、元売ブランドで十分なのでしょう。しかし、消費者の選択肢の洗礼を受ける小売市場目線の人たちは多様なプレーヤーの存在に強い関心を持ちます。 COCだから言うのではなく、石油業界は声を上げる人と市場実態に著しい乖離がある、とSSブランドの数え方一つにも感じてしまいます。
石油業界って、理屈やスローガンを叫ぶ人たちがたくさんいる。 伝統的な枕詞としては、「安定供給」、「SS事業者の9割は零細店である」。最近の流行語は「SS過疎化」、「安定供給最後の砦」、「サプライチェーン」。別に悪い言葉ではないけれど、実際に市場でやってること矛盾してねぇ? ローリー人手不足なんだけれど、「枠出荷」で系列は完全持ち届け。PBの倉取りは油槽所荷繰りの関係で一時停止。ちょと需給がゆるんだら仙台製油所で事故で「安定供給に支障」。 ひたすら供給絞りだけれど、これ零細店や過疎地のためになるのかな。運べる人に倉取りさせればいいのに。安定供給って、枠で縛るものではなく、どこにでも流通し誰でも買える状態だと思うのだけれど。 ◆ 2月5日付油業報知新聞 倉取りこそ安定供給を担保する 東京で雪が降って、テレビのニュースショーは大騒ぎです。冬だから当たり前なんですが。北海道や東北で毎日大雪が降っていても無関心なのに、東京に降ると“大事件”です。むしろ、温暖な四国や九州で降る方が「問題」は大きいと思うのです。農水産への影響は出るし、高齢者も多いですから。(しかし、「地球温暖化」ってどうなっているのでしょうか。) COCの寒冷地の会員から連絡がありました。灯油がよく売れているそうです。しかし声が浮かれていません。「毎日深夜まで配送ですよ…」と疲れ切っています。聞くと、この1年間で相当数の灯油の配送業者が廃業していたため、配達している同社に半端じゃないオーダーが集中しているそうです。 灯油を売る店は大手スーパー含めてあるのです。セルフSSは店頭売りだけ。配達業者にしても売り手の時間指定とか1週間待ちとか、ようはこなし切れていないのです。上記の会員は気立てがいいことと、独立系ゆえに機会ロスを減らしたい気持ちで自ら雪道でハンドルを握っています。 今さら言うまでもなく物流が人手不足です。ヤマト運輸は値上げ交渉の結果、法人客の4割を失いました。しかし業績は上方修正です。あのアマゾン始め残り6割の顧客に値上げを認めさせたことが奏功しました。大英断だと感心します。 今でも鮮明に記憶していますが、バブル崩壊後の1998年に、COC創設者の山口武男さんが亡くなられ、私は車で関東から愛知小牧まで走りました。お通夜の帰りの深夜、東名道は恐怖でした。中京工業地帯から東京に向かう大型トラックが列をなしているのですが、スピードの速いこと。重心の高い大型車が走行車線と追い越し車線を縫いながら、暴走族さながらの追越し競争です。怖くて近づかないようにしていました。 経済崩壊で企業が一斉に物流費の削減、効率化に動いていることを実感した光景でした。たぶん元売も激しくやっていたと思います。ところが団塊世代の大量退職と景気回復が重なり、車あっても人足らずです。バブル崩壊から安く使い過ぎて、運転手のなり手がいないのです。 元売が今後、物流コストを上げてくるでしょう。また自社物流を持つ、持たないで、PB間に仕入れ格差が生じるはずです。 そんな時にふざけた話です。A元売が一定期間、倉取り停止です。提携するB元売の基地が一時停止したので、ショートしたそうです。B社は意図的に止めた感があります。一種のPB苛めと思います。 「元売は今後、倉取りを制限する」という話がまことしやかに語られます。日本国の物流の現状を鑑みれば、消費者を逆なでする話です。過去からの石油流通に倉取りが無かったら、元売は偉そうに「安定供給」を口に出来ましたか。東日本震災時に、モノはあるのに物流不足で安定供給できかなったのは、どこの誰でしょうか。 欧米で倉取りジョバーが発達したのも、精製や油槽所縮小の中で、彼らが石油会社の物流が及ばないところをカバーして安定供給することで成長したからです。 地方都市に多いPB物流を阻害することは、SS過疎地問題を“促進”します。石油はその物性からも、滑らかに流通させることこそ安定供給です。
写真は米国のコンビニ大手WAWAのポンプと店舗。流通ブランドとして認識されている。英国の統計ではBPやシェル、ハイパー大手から30数ヵ所のRicksなんてブランドまで網羅されている。昼がって日本では、資源エネ庁、公取委、石連、全石連等々どこの官庁、団体でもっブランドは元売かせいぜいJAまで。SSのブランドって、流通ブランドだろう。流通市場に影響力のあるブランドはカウントするのが、マーケティングの常識じゃないのか。 そうか、この国のSS業界は小売業ではなく、ガソリン配給業界だった!だから元売様のブランドだけでいいんだ。 ◆ 油業報知新聞1月29日付 SSには製造所ブランドしかないのか 以前から気になるというか、気に障ることがあります。SSのブランドです。この世には元売ブランドしか存在しないようです。 役所も業界団体も「元売ブランド+PB」という括りで語ります。中には「PBと無印」といったおバカ表現まであります。もっとおバカな一般マスコミが後追いします。小売に興味がないのでしょう。元売ブランドは固有名詞であらわされますが、非系列は十把ひとからげでPBという「記号」しかありません。業界識者の“常識”なのでしょう。 手元に欧米の資料があります。米国NACS(全米コンビニ協会=SS団体)では、石油会社をメジャー5社を含むトップ15社が「全米で50%、残る50%が非系列で販売される」として、流通チャネルをコンビニとハイパーに大別しています。 コンビニではWAWA、セブンイレブン、クイックトリップ、ハイパーではコストコ、ウォルマート、クローガー等々の個別ブランド名が明記されています。 米国市場は巨大で石油会社も数多く、流通戦略も多様性があります。日本とは違うという声もあるでしょう。 それでは英国です。SS数は約8500。日本の4分の1です。石油総需要も日本の40%、精製能力は需要を下回っています。日本の高度化法を先取りした状態です。 日本よりはるかに小さな英国市場ですが、PRA(石油小売協会)の資料を見ると、ブランドが22も明記されています。シェルやBPの国際メジャーからSS数36カ所のRixというブランドまで網羅しています。もちろん、Tesco、Sainsburyなどハイパー業態もブランドとして業界団体が認知しているのです。 つまり、大きな米国市場でも小さな英国市場で、いずれも精製縮小と高度化法と同じ環境下にあって、ガソリンを売るブランドは石油会社だけではないのです。流通市場で認知されるものはブランドという考え方なのでしょう。また、そう捉えないと「市場実態」は掌握できないでしょう。 日本は「元売以外はブランドに非ず」の感があります。「精販協同!」と大政翼賛会の如き大声すら聞こえています。 しかし、“ふつうの常識”として流通市場では消費者に認知されるものがブランドです。JAはともかくとして、私が独自に数えたところ商社独自ブランドSS数は、「伊藤忠エネクス390」、「丸紅エネルギー240」、「三菱商事エネルギー210」といったところです。この数字は、キグナス、太陽と同等か上回ります。 北海道には40年以上前から組織的にPB化してきたホクレンがあります。JAとは一線を画し手独自戦略です。北海道市場に270カ所あります。これは出光と同格、昭和シェルやコスモを遥かに凌駕します。様々な事業を展開していますから、北海道では元売よりホクレンのブランド認知度が圧倒的に高い筈です。 役所も業界団体も市場実態を無視して、「ガソリン製造者」をブランドと考えているようです。これはマクドナルドを山崎製パン、セブンイレブンを日清食品の系列店と呼ぶようなものです。流通市場ではマック、セブンがブランドなのです。 たとえ1カ所でも地域消費者が認知すれば、それがブランドではないでしょうか。
1月19日に東京国際会議場の「オートモーティブワールド2018」行ってきました。驚いたな、人の多さ。 何度も自動車の技術展示会出ているけれど、往来に気配りしすぎて余計に疲れたほど。「自動運転EXPO」が台風の目。 前後方の景色はもちろん自動車の死角、車内、運転者の表情まで認証技術が進化している。GPS、インターネットと連携しAIのアルゴリズムで最適走行させる。ロボット技術も表裏一体で関連する。 現在はレベル3の実走テスト段階で、完全自動のレベル5は2025年と言われる。しかし、内外1060出店企業が相当本気で技術開発を競っている。電気自動車より内燃機関の自動運転早いと実感した。 ところで写真は会場でみかけたロボット。器用に異なる色の液体をスポイトに移して整理している。セルフSSで「キツツキ装置」(監視違反)使うより、このロボット技術あればボタン押し含めて店舗全体の監視業務できちゃうね。液面計もIOTで自動配送につなげるし。 油業報知新聞1月22日付 次世代技術の波がSSにも? 東京国際展示場で開催された「オートモーティブワールド」に行ってきました。自動車の技術展示会です。技術オンチの私にはあまり縁のないものですが、今年は「自動運転EXPO」がありイメージだけでも掴んでおこうと思いました。 今まで国際展示場のイベントには何度か言っていますが、私の経験では最大の入場者数でした。「クルマの先端技術分野 世界最大」をうたうだけあって、自動運転はじめクルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化など自動車の先端テーマに関わる国内外の1060社が出展しています。 自動運転に興味を持つのは、想像以上に技術が向上しているからです。自動のレベルは0から5まであります。0は私の中古車のように自動機能のない車です。1は加速・操舵・制動のいずれかを支援するもので現在の新車には装備されています。レベル2は上記で複数の機能を支援します。日産エクストレイルやスバルWRXなど多くの新車が装備します。 そしてレベル3はほぼ自動運転です。天候良好で視界が良いこと、走行する道路や緊急時に人的対応することの条件が付きます。昨年7月にAUDIのA8がレベル3に達しました。欧米では公道で実走しています。 レベル4も条件付ですが、自動モードで走行し、自動走行になった時にドライバーが適切に対応できなくとも自動モードで停止や回避を行います。そしてレベル5は完全自動運転です。米GMはさる18日にハンドルもペダルもないレベル4の自動運転車を実用化すると発表しています。自動運転で日本が“タコツボ化”の感があります。 展示会を見て、自動運転は安全機構、交通状況・外観・運転者の認識機能、三次元のGPS機能の3つが最適に組み合わさったものと感じました。いわゆるIoTインターネットが運行機能を担います。3機能と関連する素材や技術の展示ブースが多くを占めていました。 そして自動運転の進化は、イコールロボット技術と表裏一体です。連動してロボット技術の展示会もありました。小さなクッキーに絵を描く実演には見入ってしまいました。 石油と全く関係のない話を書いていますが、実感したことは自動運転やロボット化に比べれば、SSの無人化など簡単にできてしまうことです。欧州では相当数の無人SSが存在します。古い2002年のデータでもスカンジナビア3国は無人化率40%以上です。 ロボット技術があれば、問題になった“キツツキ”(簡便な承認ボタン装置)など不要です。認識のカメラ技術とセンサーが組み合わされば人間より安全管理が徹底します。IoTで消防と連結すれば、今よりはレベルの高い防災監視体制ができます。消防もドローンを巡回させれば、火災の早期発見につながるでしょう。 それと先述の器用なロボットを見て、自動車整備に技術が広がる可能性を感じました。認識機能で点検作業やれますね。金属をパフで研磨するロボットもありましたが、応用すれば車のコーティングもできます。嫌なオチになりましたが、東京五輪に向けてSSと次世代技術の波を考えさせられた1日でした。
もう「ガソリンの思想」を大声で語る時代ではない。 どこかの団体は、常に「ガソリン問題」を見つけては騒ぎ立てて政治問題化して、経産省から団体の「生命維持装置」として予算を引っ張り出す。補助金が出ていいかもしれないけれど、現実として零細企業がどんどん淘汰されてきた。 そろそろ他の小売業界で当たり前のように語られている、「経営論」を真面目に考えなければ。経営論で考えれば、1SS企業にも活路はあるはず。 1月15日付油業報知新聞 経営論と業界論 新しい年が明けました。 私事ながら、年末に嬉しいことがありました。COC会員でもないSS経営者から励ましのお手紙を戴きました。私ごときの拙文に、ありがたいことです。 さて、歴史的、時系列に物事を見ると、日本のSS業態は先進国でもっとも“混乱”していると思われます。元売系列ではチェーン店の統一感がありません。また、元売が「戦略」と称するものが、消費者接点で実行されているのか、どのような方法論が系列内で共有化されているのか、全く見えません。昔から変わりません。 PBもPBとしてのブランド力を確立している所は少なく、昭和時代の無印とどこが違うのか分からないSSもあります。逆に、新規参入のコストコが異彩を放っています。 私が“混乱”と思うのは、実践的な経営論と業界論がブレンドされて訳が分からなくなっていることです。経営論はリアリズムの世界です。我が社のヒト・モノ・カネの資産で最大の利回りを図ることです。 そして、個々の経営者の資質や与えられた環境は異なりますから、おのずと経営の方向性、方法論も異なるはずです。SS経営では、ガソリンだけ唯一の共通商品であって、経営全体のデザインは経営者の戦略で異なるはずです。 一方、業界論はほんらい研究者の世界ですが、監督官庁が全体の状況判断のために行うものと理解しています。ところがそこに、ガソリン市況論とか安定供給論がSS経営者から出てくることで、業界論があたかも「尊王攘夷」のような思想に支配されがちです。 そして同業者は思想を一にすべきという「空気」が醸し出されます。協調こそ正義であり、個々の経営者が独自にチャレンジする経営改革も思想にそぐわなければ排除の論理に変わる。この繰り返しがSS業界の歴史ではなかったでしょうか。SSを利益業態化しようというリアルな話よりも、 “最後の砦”とか“サプライチェーン”というスローガンばかりが勇ましく闊歩しています。 何を言いたいかといえば、リアルな経営論よりもガソリン様を本尊とする業界論に支配された結果、本当に大きな変動に中小企業が耐えうるのか心配になっているからです。 ◆ 今年以降、欧米に比して半世紀の遅れを取り戻すように、SS業態の洗い直しが始まる予感があります。 系列内では、対元売優位性を競う熾烈な「系列内競争」が展開しています。元売にとって質の良いSSをどれだけ持つかが、カギを握ると思います。ガソリン需要が依然として減少傾向を続ける中で、立地・設備から利益を最大化する競争です。 独立系・PBの応援団である私ですが、さすがに楽観していません。もともと中小企業の自己投資ですから、多くは立地・設備それにPOSシステムなどガソリン競争では元売系列の後塵を拝しています。“第2の地下タンク問題”とされるPOSのIC化投資も待ち受けています。 ただし、経営者の自助努力が通用するのが利益事業の開発です。COCでもチャレンジする人たちがいます。独立系の自由度を発揮して実現してほしい。年初の期待です。
写真は、エクソンモービルが出店を開始したメキシコのSS。モービルブランドで展開している。メキシコではPEMEXという国営会社独占市場だったが、外資規制が外れてEMそしてBPも出店を進めている。メキシコ湾岸にシェールオイルを持つ強みで、一気に勢力拡大だろう。 シェルは、BG(ブリティッシュガス)の巨額買収で昭和シェル株式売却(こんなのは些事)など資産売却しながら、BG買収で火力電源を確保できるため、EV高速充電対応SSをデザインしている。 BPはメキシコ以外にアジアのSS積極展開に拍車をかけている。 翻って、日本の元売様は「アジア戦略」をうたいながら、「検討中」ばかり。大メジャーが実稼働している時に会議やっている。実はアジアで戦う自信がないのでは・・・。 油業報知新聞12月25日付COCと独立経営 「アジア展開」はどうなったのか? BPのエネルギー統計によると、2006年から2016年のアジア大洋州の石油消費は年率3.0%ずつ増加しており、06年比で133.5%の増加です。アジアを除く世界は103%ですから、あらためてアジア地域の需要拡大を実感します。 06年に29%だったアジアのシェアは、16年に35%と大きく台頭しています。この数字は、10年間にアジアで日本国が2つ出現したことを意味します。 石油メジャーの世界では、ブリティッシュガス買収に8兆円の巨費を投じたRDシェルが昭和シェル石油を売却するなど、既存石油資源売却に動いています。ガス資源で火力電源を確保できるので、欧州ではEVを視野に入れた流通市場戦略に動いています。 一方、冒頭データの出所BPは、メキシコ湾流出事故から立ち直り、積極的な投資戦略です。需要旺盛なアジアに布石を打っており、SSでは豪州、インドネシア、インドで買収と出店に動いています。豪州では大手流通のウールワースのSS550カ所を570億円で、インドネシアでも350億円を投じてSS網を拡充しています。 メキシコでは、国営企業1社体制が緩和されて、BPとエクソンモービルがSS出店を加速させています。伸びる市場で手持ちの資源を背景に、燃料油から潤滑油まで大きく稼ぐ動きです。 ◆ 日本の元売は、まだ未稼働のようですが出光がベトナムで製油所を完成させ、豪州とカリフォルニア州で大手ジョバーを経営しています。JXTGでは旧東燃が豪州大手港湾物流業者と合弁しており、ベトナムには製油所建設を表明しています。しかし現段階では、「豪州で燃料輸入ターミナルの建設を検討中」、「 製油所新設で具体的な共同検討を行う覚書を締結 」に止まっています。その他の元売も大胆にアジアで商圏拡大するような事業は見当たりません。 先のBP統計で、ほぼ横ばいの台湾を除くとアジアで日本は唯一年率2%ずつ市場縮小しています。日本を除くとアジアの伸び率は150%近く、年率でも約5%という成長市場です。 世界で稼ぐ日本の産業界にあって、成長市場に打って出ないのは石油業界だけでしょう。東大阪の中小ネジ工場も、海外工場を持ち世界に製品を売っているのですから。 「(元売は)新たな成長機会を確保する観点から、アジア等の成長市場等への海外展開に関する積極的な検討を行っている」と資源エネ庁報告書は書きますが、すでにメジャーは「検討」どころか商売を始めています。輸出も海外展開ですが、これは韓国がすでに20年前からやっているビジネスモデルの後追いに過ぎません。 元売が本格参入する頃には海外勢がシェアを確立するか市場が成熟していて、今度はアジアで直営セルフの安売りをしでかして国際バッシングを受けるかもしれません。 小売流通業者も、今後はアジア市場展開の可能性くらいは検討する必要があります。日本の店舗管理とサービスレベルは高い筈ですから、競争で鍛えたノウハウが生きる道もあります。そのためにも供給、物流整備といったインフラは大企業の責務となります。 何兆円も売上げる図体のでかい会社が、国内配給会社で安住するタコツボであって良い筈がありません。